会社のお金と決算書が読める講座

区分3 経営に使う数字★★

No.07 借入・金利・返済

借入を「返せるか」で判断する単元です。決算書の読み方がいちばん実際の経営判断に効く所なので、ほどほどに時間をかけます。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 返済は損益計算書に出ない
  3. 第2章 返せるかを数字で見る
  4. 第3章 金利の効き方
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 元金と利息 :借りた額と、借りた代金

借入には、2つの部分があります。

金利は、借りた額に対する1年あたりの利息の割合です。 1,000万円を年2%で借りれば、1年の利息は1,000万円×2%で20万円です。数字は説明用の例です。

② 返済 :元金を減らす部分と、利息を払う部分

毎月の返済額には、元金を減らす分と利息の分が含まれています。 返済方法には、毎月の返済額が同じ「元利均等(がんりきんとう)」と、毎月の元金が同じ「元金均等」があります。名前はこの程度で十分です。

③ 似た言葉との違い

何のことか どの表に出るか
元金の返済 借りたお金を返す 貸借対照表の借入金が減る・キャッシュフロー計算書の財務活動
利息の支払い お金を借りた代金 損益計算書の費用(営業外費用)
借入の受け取り 借りてお金が入る 貸借対照表の借入金が増える・キャッシュフロー計算書の財務活動

「元金は費用ではない、利息は費用」。ここが、この単元のいちばんの軸です。

第1章 返済は損益計算書に出ない

① 元金の返済は費用にならない 必ず覚える

借りたお金が入った時は、売上ではありません。 お金が増える代わりに、返さなければならない借金(借入金)も増えるだけです(No.04)。

返す時も同じです。お金が減る代わりに、借入金も減るだけで、費用ではありません。元金を返しても、損益計算書の利益は減りません。

一方で、利息は費用です。損益計算書の中で、本業の下の方(営業外費用)に出ます。

② だから「黒字なのに返せない」が起きる 必ず覚える

次は架空の例です。

利益は黒字です。それでも、元金の返済200万円は利益の計算に入らないまま、現金だけが出ていきます。 利益が120万円しかないのに、200万円を返すお金はどこから来るのでしょうか。

その答えは、利益ではなくキャッシュフロー(現金の動き)です。次の章で見ます。

③ 返済はキャッシュフロー計算書のどこか 必ず覚える

No.05で、キャッシュフロー計算書には3つの区分がありました。

元金の返済は、財務活動のマイナスに出ます。 そして返済に使うお金は、基本的に、営業活動で稼いだお金から払います。

○ よくある勘違い:「借入の返済は経費になる」→ ×。経費になるのは利息だけで、元金は経費になりません
○ 返済の資金は、利益ではなく営業活動のキャッシュフロー(No.05)で考えます
○ 関係する単元:No.04(借入金は貸借対照表の負債)、No.05(財務活動)

第2章 返せるかを数字で見る

① 年間の返済額と、営業で稼ぐお金を並べる 必ず覚える

返せるかどうかは、1つの比較で見ます。

1年に返すお金(元金+利息)と、1年に営業活動で稼ぐお金を並べる

営業活動で稼ぐお金は、キャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」です(No.05)。 freeeの試算表なら、税引後の利益に、お金が出ていかない費用(減価償却費など)を足したものが近い数字になります。細かい計算は、No.05の考え方で十分です。

次は架空の例です。

会社A 会社B
営業活動で稼ぐお金(年) 300万円 300万円
年間の返済(元金+利息) 120万円 280万円
稼ぐお金の中で、返済に回る割合 40% 約93%

どちらも黒字で、稼ぐ額も同じです。 でも会社Bは稼いだお金のほとんどが返済に消えるので、設備の入れ替えや想定外の出費に使えるお金がほとんど残りません。

目安として「返済が稼ぐお金の何割までなら安全か」の公的な決まりはありません。 銀行は「稼ぐお金に余裕があるか」を見ます。余裕が薄いと感じたら、返済期間を延ばして年間の返済額を下げる相談も選べます。

② 借入が何年分の稼ぎか(債務償還年数) さらっと

銀行がよく見る指標に、債務償還年数(さいむしょうかんねんすう)があります。

借入金の残高 ÷ 1年に営業で稼ぐお金 = 返し終わるまでの年数の目安

たとえば借入残高が900万円で、年に300万円稼ぐなら、約3年です。 年数が長いほど返済が重いと見られます。どこからが長いかは、業種や銀行で見方が違うので、数字は暗記しません。

第3章 金利の効き方

① 利息は「残高×金利」 必ず覚える

利息は、借りている残高に金利をかけて決まります。 残高が減れば利息も減り、金利が上がれば利息も増えます。

架空の例で、残高1,000万円の場合です。

金利 1年の利息
1% 10万円
2% 20万円
3% 30万円

金利が1ポイント上がると、1,000万円あたり年に10万円、利息が増えます。 借入が3,000万円なら、年に30万円です。小さく見えて、利益が薄い会社には響きます。

② 固定金利と変動金利 さらっと

金利の決まり方には、大きく2つあります。

変動金利の借入は、金利が上がると返済が増えます。 日本銀行の記者会見では、短期プライムレートの動きが変動型の貸出金利に波及しうるという説明がされています。短期プライムレートは、銀行が優良な企業に貸す時の短期の基準になる金利のことです。 金利と借入の関係を、日銀の金利政策までさかのぼって見るのは、No.09で扱います。

元金の返済は費用ではなく、利息だけが費用。返済は営業活動で稼いだお金から払うので、1年の返済額と、営業で稼ぐお金を並べて「余裕があるか」を見る。

確認問題

問1 利益が年に150万円出ている会社が、年に200万円の元金を返しました。この返済は、損益計算書の利益にどう影響しますか。

問2 借入の返済は、基本的に何から払うと考えますか。

問3 変動金利で3,000万円借りています。金利が1ポイント上がると、1年の利息はおおよそどう変わりますか(架空の数字)。

出典:日本銀行「総裁記者会見」(2026年1月23日、金融政策決定会合後)で、短期プライムレートと貸出金利の関係についての説明あり。https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2026/kk260126a.pdf /元金と利息・債務償還年数は、一般的な会計・金融の考え方に基づく説明です(数字はすべて架空の例)。