会社のお金と決算書が読める講座

区分3 経営に使う数字★★

No.08 利益率・自己資本比率・損益分岐点

決算書の数字を「割り算」で見やすくする指標を3つ覚える単元です。計算は足し算と割り算だけで、値上げや採用を決める時にそのまま使えます。しっかり読むのは損益分岐点の所です。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 利益率 :売上のうち何割が残るか
  3. 第2章 自己資本比率 :自分のお金がどれだけあるか
  4. 第3章 損益分岐点 :赤字と黒字の境目の売上
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 指標 :数字を比べやすくした割合

決算書の金額は、会社の大きさで変わります。売上1億円の会社の利益100万円と、売上1,000万円の会社の利益100万円は、意味が違います。 そこで金額を割り算して、割合にしたものを指標(しひょう)と呼びます。大きさの違う会社や、去年の自社と比べやすくなります。

② 固定費と変動費 :売上が変わっても変わらない費用と、売上に合わせて変わる費用

損益分岐点の話では、費用をこの2つに分けて見ます。

③ 似た言葉との違い

何を言っているか 見る表
利益率 売上のうち、利益が何割残るか 損益計算書
自己資本比率 会社の資産のうち、自分のお金が何割か 貸借対照表
損益分岐点 赤字と黒字の境目の売上 損益計算書(固定費・変動費に分けて見る)

第1章 利益率 :売上のうち何割が残るか

① 計算式と、見る2つ 必ず覚える

利益率は「利益 ÷ 売上 × 100」です。どの利益を使うかで、意味が変わります。ここでは2つ見ます。

架空の例で、売上1,000万円・売上総利益400万円・営業利益50万円なら、粗利率は40%、営業利益率は5%です。

営業利益率が5%とは、100円売って5円残る、という意味です。 粗利率が高いのに営業利益率が低い会社は、人件費や家賃などの固定費が重い会社です。ここまでの2つを並べると、「どこで消えているか」が見えます。

② 目安は業界で違う 必ず覚える

「利益率が何%なら良い」という全業種共通の基準はありません。 物販は粗利率が低めでも回転で稼ぎ、サービス業は人件費の割合が高く粗利率は高めに出る、というように、業種で構造が違います。

比べる時の順番は次のとおりです。

  1. まず、自社の去年・去年の同じ月と比べる(これが一番確実)
  2. 次に、同じ業種の平均と比べる

業種平均は、中小企業庁の中小企業白書や中小企業実態基本調査などで調べられます。毎年変わる数字なので、本単元では覚えません。

○ よくある勘違い:「利益率が高い方が、いつも良い」→ ×。価格を上げて売上が減れば、率だけ高くて利益額が減ることもあります
○ 関係する単元:No.03(損益計算書の利益の種類)

第2章 自己資本比率 :自分のお金がどれだけあるか

① 計算式と意味 必ず覚える

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100

純資産と総資産は、貸借対照表で見ました(No.04)。 総資産は、会社が持つものの合計です。そのうち、返さなくてよい自分のお金(純資産)が何割かを見ます。

架空の例です。

会社A 会社B
総資産 5,000万円 5,000万円
純資産 2,000万円 500万円
自己資本比率 40% 10%

会社Bは、持っているものの9割が借入などの返さなければならないお金で支えられています。 売上が落ちて赤字が続くと、純資産が先に減っていきます。比率が低い会社ほど、赤字に耐える余裕が小さいと言えます。

② 目安は規模と業種で違う さらっと

中小企業白書(2021年版)は、2019年度のデータで、自己資本比率は中規模企業が約4割台、小規模企業は約2割弱と、規模で大きな差があることを示しています。 数字は年度と調査で変わります。ここで覚えてほしいのは、「小さい会社ほど比率が低い傾向がある」ことと、大企業の数字と単純に比べないことです。

自社の比率は、去年の同じ時期と比べて、上がっているか下がっているかを見るのが第一歩です。

第3章 損益分岐点 :赤字と黒字の境目の売上

① 損益分岐点売上高 必ず覚える

損益分岐点(そんえきぶんきてん)は、利益がちょうどゼロになる売上のことです。 これを超えれば黒字、下回れば赤字になります。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

変動費率は、売上のうち変動費が占める割合です。

架空の例です。

損益分岐点売上高は、300 ÷(1−0.6)= 750万円です。 月の売上が750万円を超えれば黒字、下回れば赤字になります。

なぜこの式かを一言で言うと、売上100円のうち、変動費を払った残りの40円で固定費を払っていくからです。残りが固定費に届いた所が境目です。

② 損益分岐点比率 :売上があとどれだけ落ちても耐えられるか さらっと

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100

上の例で、今の売上が1,000万円なら、750 ÷ 1,000 = 75% です。 比率が低いほど、売上が落ちても赤字になりにくい会社です。この例では、売上が25%減るまでは黒字でいられます。

中小企業白書(2021年版)は、2019年度のデータで、大企業より中小企業の比率が高く、業種でも差があるとしています。 自社の業種の平均は調べられますが、まずは自社の事業ごとの比率の変化を見ます。

③ 値上げを考える 必ず覚える

上の例で、価格を5%上げたとします(客数は変わらないと仮定します)。 売上は1.05倍になりますが、変動費の額は変わらないので、変動費率は60 ÷ 1.05 ≒ 57%に下がります。

損益分岐点売上高は、300 ÷(1−0.57)= 約700万円に下がります。 つまり、値上げで、赤字になる売上のラインが750万円から約700万円に下がります。

ただし、客数が減れば効果は薄れます。どれだけ客が減るまでなら値上げが得かは、この式を使って計算できます。

④ 採用を考える 必ず覚える

人を1人増やすと、毎月の給料と社会保険料が固定費として増えます。 架空の例で、1人採用して月30万円の固定費が増えるとします。

つまり、この1人のために、損益分岐点が75万円上がります。 この人が、月に75万円以上の売上増を生めば、元が取れる計算です。

介護のように売上が国の決めた報酬で決まる仕事では、人を増やせば、その人が稼ぐ報酬が売上に足されます。 やり方は、AIに数字を渡して計算を頼めます。頼み方の例:「固定費は月300万円、変動費率は60%。1人採用で固定費が月30万円増える時、損益分岐点売上高がいくら上がるかを計算して」。

⑤ 現実の限界 さらっと

訪問介護のように、費用の大半が人件費の事業では、固定費と変動費をきれいに分けられません。 ヘルパーの給与を、働いた時間に応じて払うなら変動費寄り、固定給なら固定費寄りです。 分けにくい時は、「だいたいこちら寄り」と割り切って、仮の数字で計算して構いません。目的は精密な数字ではなく、値上げや採用の方向を決めることです。

利益率は「売上のうち何割残るか」、自己資本比率は「資産のうち自分のお金が何割か」、損益分岐点は「固定費÷(1−変動費率)」。目安は業界で違うので、まず自社の去年と比べる。

確認問題

問1 売上1,000万円・営業利益50万円の会社の営業利益率は何%ですか。

問2 総資産5,000万円・純資産1,000万円の会社の自己資本比率は何%ですか。

問3 固定費が月200万円・変動費率が50%の会社の損益分岐点売上高はいくらですか。

問4 固定費が月300万円・変動費率が60%の会社が、1人採用して固定費が月30万円増えます。損益分岐点売上高はいくらになりますか。

出典:中小企業庁「2021年版 中小企業白書」第2部 第1章 第1節 中小企業の財務基盤・収益構造と財務分析の重要性。https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b2_1_1.html /計算式は一般的な会計・経営の考え方に基づきます。数字はすべて架空の例です(業種平均は年度・調査で変わるため、最新は中小企業庁の公表資料で確認してください)。