会社のお金と決算書が読める講座

区分1 お金の流れの土台★★★

No.02 利益とお金は別物(黒字倒産)

利益が出ていても、手元のお金が足りなくなることがあります。この単元は、その理由を知る回です。区分1の核心です。ここが分かると、あとの表が読みやすくなります。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 ずれる理由は3つ
  3. 第2章 黒字倒産を数字で見る
  4. 確認問題

第0章 前提知識

① 黒字倒産 :利益が出ているのに会社が行き詰まること

損益計算書(一定の期間の売上・費用・利益をまとめた表。No.03で詳しく見ます)では黒字なのに、支払うお金が足りなくなって、会社が続けられなくなることがあります。 これを黒字倒産と呼びます。

利益が出ているなら大丈夫だろう、と感じるのが普通です。 その感覚は、半分だけ正しく、半分は間違っています。 この単元で、間違っている半分を見ていきます。

② 売掛金 :サービスをしたけれど、まだ入金されていないお金

サービスをして売上を立てたあと、代金が入る前の状態を売掛金と呼びます。訪問介護なら、介護報酬の未入金分です。 「請求書は出したけれど、まだ振り込まれていない分」とも言えます。 貸借対照表(BS。ある日の持ち物の一覧表)という別の表に出てくる項目で、どこに出るかはNo.04(後で出ます)で扱います。

③ 利益とお金の違い

何を表すか いつ動くか
利益 売上-費用の計算上の儲け 売上や費用が発生した時(サービスをした月)
手元のお金 銀行口座や現金にある金額 実際にお金が出入りした時

利益は「発生した時(サービスをした月)」に、お金は「出入りした時」に動きます。 動く時期が違うので、ずれます。

第1章 ずれる理由は3つ

① 入金が後になる :売上は立つが、お金はまだ来ない 必ず覚える

売上は、サービスを提供した時に立ちます。 でも、お金が入るのは請求のあとです。

訪問介護では、介護報酬が国保連(国民健康保険団体連合会)から入るまでに、約2か月かかります。 この間、売上は立っていますが、手元のお金は増えません。

一方で、ヘルパーさんの給与や家賃は、その月のうちに払います。 この間の売上が、売掛金として残ります。 だから、事業が伸びて売上が増える時ほど、先に出ていくお金が増えて、入金が追いつかなくなります。

② 払っても、すぐには費用にならない :設備・借入の返済・在庫 必ず覚える

お金が出ても、その時には損益計算書の費用にならない物があります。

逆もあります。 借入をして銀行から入ったお金は、売上ではありません。手元のお金は増えても、利益は増えません。

③ 費用なのに、お金が出ない :減価償却 さらっと

減価償却とは、長く使う物の代金を、使う期間に分けて費用にすることです。この費用を減価償却費と呼びます。 減価償却費は、損益計算書では費用として利益を減らしますが、その年にお金が出ていくわけではありません。お金は、設備を買った時にすでに出ています。

例:200万円の車を5年で分けると、毎年40万円が費用になります。お金が出たのは買った時の200万円だけです。法定の年数は、物の種類で違います。

これは「利益よりお金の方が多く残る」方向のずれです。 深追いしなくて構いません。

○ よくある勘違い:「黒字だからお金は大丈夫」→ ×。利益は計算上の数字で、入金のタイミングを含みません
○ 売上が伸びている時ほど、先に払うお金が増えて、資金が足りなくなりやすい
○ 利息は費用、元本の返済は費用ではない。借入の詳しい話はNo.07
○ お金の動きだけを見る表がキャッシュフロー計算書。詳しくはNo.05

第2章 黒字倒産を数字で見る

① 開業直後の訪問介護の例 必ず覚える

数字は、分かりやすくした架空の例です(No.06でも同じ会社を使います)。 開業時の手元のお金を600万円とします。毎月の売上(介護報酬)は400万円、費用(給与・家賃など)は360万円で、費用はその月のうちに払います。介護報酬は約2か月後に入る前提です。

月 売上 費用 利益 お金の出入り 月末の手元のお金
1月 400万円 360万円 40万円 -360万円 240万円
2月 400万円 360万円 40万円 -360万円 -120万円
3月 400万円 360万円 40万円 +400万円(1月分)-360万円=+40万円 -80万円
4月 400万円 360万円 40万円 +40万円 -40万円
5月 400万円 360万円 40万円 +40万円 0円
6月 400万円 360万円 40万円 +40万円 40万円

どの月も、損益計算書は40万円の黒字です。 それなのに、2月末には手元のお金が足りなくなります。-120万円は、その分を借入などで用意しないと支払いができない、という意味です。

3月から1月分が入り始めると、毎月+40万円ずつ戻っていきます。5月末でやっと0円、6月末に40万円です。 つまり、2月末の-120万円を借入などで埋めて、約3か月かけて戻す形になります。これが黒字倒産の形です。

② どう防ぐか :先に手元のお金を見る 必ず覚える

防ぐには、利益だけでなく、手元のお金の見通しを持つことです。 この例なら、最初の2か月の出費は360万円×2=720万円で、手元の600万円では120万円足りません。開業前に、不足分を借入などで用意しておきます。

こうしたお金の見通しを表にした物が、資金繰り表です。詳しくはNo.06(後で出ます)で扱います。 今は、「利益と一緒にお金の見通しも見る」という習慣だけ覚えておいてください。

③ 自社で見る所 さらっと

freee で、損益計算書の利益と、銀行口座の残高を並べて見ます。 利益が出ているのに、残高が減り続けている月があれば、このずれが起きています。

利益とお金は、動く時期が違うので別物。入金の遅れ、設備や借入の返済のように費用にならない支払いがあるので、黒字でもお金が足りなくなる。利益と一緒に、手元のお金の見通しを見る。

確認問題

問1 訪問介護の事業所で、毎月の損益計算書は黒字なのに、手元のお金が減っています。主な原因として最も考えられるのは?

問2 銀行から300万円を借りました。この300万円について正しいのは?

問3 車を200万円で一括購入しました。購入した年の損益計算書とお金について、正しいのは?

問4 第2章の例(毎月の利益は40万円)で、2月末に手元のお金がマイナスになる理由は?

出典:中小企業庁「中小企業の会計に関する基本要領」(減価償却などの考え方)。介護報酬の入金時期は、請求から入金まで約2か月とする自社の運用に基づく例で、制度の細部は事業所の状況によって異なる。